2014年10月18日土曜日

『あなたは知ってる?森山&荒木がすごいワケ by 飯沢耕太郎』が開催されました

『PHaT PHOTO写真教室 秋の文化祭 2014』のワークショップの一つ『あなたは知ってる?森山&荒木のすごいワケ by 飯沢耕太郎』が10月17日19:30〜21:00に開催されました。

多くの方に「写真集食堂 めぐたま」でも有名な飯沢耕太郎さんですが、「私は店主ではない」の一言からワークショップはスタートしました。

飯沢さんは写真評論のお仕事を30年以上されており、所有されている写真集の置き場に困った時思いついたのがおいしい食事+写真集の見れる空間だったそうです。
5,000冊ほどある蔵書の中でも最も多く所有されているのが荒木経惟さんの写真集。「めぐたま」でも一人の写真家が一つの棚を上から下まで埋めているのは荒木さんだけとのこと。荒木さんは写真集、著書を含めると460〜470冊の作品を発表されており、飯沢さんはそのうち300冊ほど所有されているそうです。
このワークショップで取り上げられたもう一人の写真家森山大道さんの写真集も多く、棚2段分ほどが埋まっているとのことでした。

森山大道さん、荒木経惟さんという世界的にも有名な二人の偉大な写真家。その個人の歴史を紐解きながら、なぜそこまで高く評価されるのかをわかりやすく説明するスタイルでワークショップは進みます。

1938年大阪に生まれた森山大道さんは、幼少の頃から転校することが多く孤独であったそうです。飯沢さん曰く、荒木さんにも共通することですが子供のころの生い立ちがその後の写真家としての感性に大きく影響するように思われるとのこと。
彼の作品に似た写真を撮っている人は多いでしょうし、最近では「森山モード」のような設定のできるカメラもあるようですが、そもそもグラフィックデザインから始まっている森山さんの画面構成力、デザイン力は圧倒的。森山さんの描かれたデッサンを見たことがあると言う飯沢さん、それは素晴らしいの一言だったそうです。
その写真の特徴は移動する視点。定点観測ではない、常に移動し続ける視点であるとのこと。

森山さんの生い立ちから写真の道に進んだ若い頃、デビュー作の裏に隠されたストーリー、写真家としての歴史を説明しながら写真集の中のそれぞれの写真の意味を話して下さる飯沢さん。
世の中の全ての写真集が理解できるわけではない。この写真がなぜここに入っているのか未だに理解できないし、森山さん自身もその謎は解けないのではないだろうかと細かな説明を交えながら写真集の1ページ1ページがめくられて行きます。

また荒木経惟さんは1940年東京で生まれ、近くには遊女の投げ込み寺として知られる三ノ輪の浄閑寺や吉原のある土地だそうです。ここからも、その後の荒木さんの写真を表す「性(生)」や「死」の観念が幼少時から形成されたのだろうと言う飯沢さん。
初期の写真集「水着のヤングレディたち」では、水着女性の写真に名前と電話番号も記載されていたと言います。荒木さん、破天荒です。
「私小説こそ私の写真」と言い、一人称の写真(後に私写真という言葉が生まれる)を撮る荒木さんの作品を表す言葉は「虚実皮膜」虚構と現実が薄皮一枚でせめぎ合うというものだそうです。

有名な写真集「センチメンタルな旅」の構成についても詳しくお話し下さいました。参加者の皆さん、その話に引き込まれ覗きこむようにして写真集に集中しています。
この写真集は「性 >> 死 >> 性(エロス >> タナトス >> エロス)」というストーリーになっているとのこと。今まで見えていなかったものが突然目の前に現れたような気がしました。
ちなみにこの写真集には荒木さんの奥様である陽子さんのヌード写真が収められています。その陽子さんは当時勤められていた会社の上司にその写真集を売りつけたそうです。奥様もすごい方だったのですね。

今回のワークショップで取り上げて頂いた森山大道さん、荒木経惟さんを対比するとしたら森山さんが「物語を壊す写真家」であるのに対して荒木さんは「物語を創る写真家」であるとのこと。その言葉を聞いただけでもこれからお二人の写真の見方が変わるように思います。
二人の偉大な写真家を形成する上で重要な出来事の日時、影響を与えた人物名、それら全てをスラスラと説明に交えてお話し頂いた飯沢耕太郎さん。得るものが大きすぎて、言葉にしてしまうともったいないと感じるほどのワークショップでした。

『PHaT PHOTO写真教室 秋の文化祭 2014』もいよいよ10月19日(日)にフィナーレを迎えますが、これから開催されるワークショップもあります。まだまだ間に合いますので、ぜひ一度チェックしてみてくださいね。

このBlogでは全ワークショップとイベントのレポート記事をお届けしていく予定です。これからもお楽しみに!

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